介護休暇とは【制度のしくみと対象者について解説】

介護休暇とは【制度のしくみと対象者について解説】

こんにちは。社会福祉士・介護福祉士の笑和です。

同居する家族の介護と仕事の両立が難しいと感じ、残念なことに仕事を辞めざるを得ない人がいます。

厚生労働省が発表した平成30年 雇用動向調査によると、介護や看護を理由として離職する人は、2017年には9万人とされています。今後、平均寿命の長寿化、高齢化が進めば、介護離職はより一層増加するものと見込みです。

そんななか政府は、身内等の介護を理由にした離職介護離職ゼロを目指し、社会整備を加速していく意向を示しています。

この記事では、家族の介護をしながらも仕事を続けることにつながる「介護休暇」について説明します。

介護休暇制度とは

介護休暇は育児・介護休業法によって、定められている休暇です。

厚生労働省の育児・介護休業法のあらましによると、介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話を行う労働者に対し与えられる休暇であり、労働基準法第39条の規定による年次有給休暇とは別に与える必要がある、とあります。

狙い

要介護状態にある家族の介護や世話のための休暇を取得しやすくし、介護をしながら働き続けることができるようにするための権利として介護休暇が位置づけられています。

その狙いは労働者に介護休暇の利用を促し、介護離職を防ぐためです。

日数・時間単位で取得できる

この休暇は1日単位、半日単位で取ることができます。要介護認定の申請等、介護に関わる書類の手続きや、送迎等を行う際にも、この休暇を利用可能です。

令和3年1月から、介護休暇は時間単位で取得できるようになります。これによって、要介護状態にある母親の病院の送り迎えで、部分的に1時間だけ休暇を取ることも可能です。

対象となる労働者

握手してる写真

原則として、対象家族を介護する全ての男女労働者が対象となります。しかし必ずしも介護休暇が取得できるわけではありません。以下で詳しく解説します。

事業主が拒否する場合

労使協定がある場合は、事業主は以下の労働者からの介護休暇の申出を拒むことができます。

  • 勤続6ヶ月未満の労働者
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 半日単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(※1日単位での申出は拒めない)
    また、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は、半日単位での取得はできません。
※令和3年1月から、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者でも、時間単位の介護休暇を取得できるようになります。

介護休暇が取得できない労働者

日々雇い入れられる者、つまり日雇い労働者は対象外です。

介護休暇の対象家族

対象となる家族の範囲は次のとおりです。

  • 配偶者(事実婚の場合を含む)
  • 父母(養父母を含む)
  • 子(養子を含む)
  • 配偶者の父母
  • 同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹および孫
上記以外の家族は、介護休暇を取得するうえでの対象家族とはなりません。事実婚を含む配偶者と規定されているため、内縁の夫・妻の場合は、対象家族となります。

要介護状態の定義

常時介護を必要とする状態については、以下の表を参照しつつ、判断することとなります*8。ただし、この表の存在が労働者の介護休暇取得の妨げにならないように、個々の労働者の事情に合わせて、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるように、事業主は柔軟に運用することが望まれます。

             状態
項目
1
(注1)

(注2)
①座位保持(10分間一人で座
っていることができる)
自分で可 支えてもらえればできる(注3) できない
②歩行(立ち止まらず、座り込
まずに5m程度歩くことがで
きる)
つかまらないでできる 何かにつかまればできる できない
③移乗(ベッドと車いす、車い
すと便座の間を移るなどの乗
り移りの動作)
自分で可 一部介助、見守りなどが必要 全面的介助が必要
④水分・食事摂取(注4) 自分で可 一部介助、見守りなどが必要 全面的介助が必要
⑤排泄 自分で可 一部介助、見守りなどが必要 全面的介助が必要
⑥衣類の着脱 自分で可 一部介助、見守りなどが必要 全面的介助が必要
⑦意思の伝達 できる ときどきできない できない
⑧外出すると戻れない ない ときどきある ほとんど毎回ある
⑨物を壊したり衣類を破くこ
とがある
ない ときどきある ほとんど毎回ある
(注5)
⑩周囲の者が何らかの対応を
とらなければならないほどの
物忘れがある
ない ときどきある ほとんど毎回ある
⑪薬の内服 自分で可 一部介助、見守りなどが必要 全面的介助が必要
⑫日常の意思決定(注6) できる 本人に関する重要な意思決定はできない(注7) できない
  • (注1)各項目の1の状態中、「自分で可」には、福祉用具を使ったり、自分の手で支えて自分ででき
    る場合も含む。
  • (注2)各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症
    高齢者等の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。
  • (注3)「①座位保持」の「支えてもらえればできる」には背もたれがあれば一人で座っていることが
    できる場合も含む。
  • (注4)「④水分・食事摂取」の「見守り等」には動作を見守ることや、摂取する量の過小・過多の判
    断を支援する声かけを含む。
  • (注5) ⑨3の状態(「物を壊したり衣類を破くことがほとんど毎日ある」)には「自分や他人を傷つ
    けることがときどきある」状態を含む。
  • (注6)「⑫日常の意思決定」とは毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力をいう。
  • (注7)慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定
    はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合
    意等)には、指示や支援を必要とすることをいう。

介護休暇の日数

要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者は、事業主へ申し出ることにより、年に5日まで、2人以上であれば年に10日までを限度として、介護休暇を取得することができます。
象家族が3人以上いる場合の規定はありませんので、10日の取得が上限になります。

介護休暇の単位

取得できる日数の単位は、1日単位または半日単位(1日の所定労働時間の半分)です。労使協定により、これと異なる時間数を半日と定めた場合には、その半日を取得可能です。
前述のとおり、令和3年1月から時間単位での休暇が取得できるようになります。

介護休暇の取り方・必要なもの

はんこを押す人 労働者が介護休暇を取得したい場合、事業主にその申出をしなければなりません。申出を受けた事業主は、先述の拒むことのできる労働者でない限り、原則として、これを拒否したり、期間を変更したりすることはできません

申出で事業主に伝えること

介護休暇を申し出ようとする労働者は、次にかかげる事項を、事業主に対して明らかにします*9。

  • 介護休暇申出をする労働者の氏名
  • 介護休暇申出に係る対象家族の氏名および前号の労働者との続柄
  • 介護休暇を取得する年月日
  • 介護休暇申出に係る対象家族が要介護状態にある事実
この申出に関して、勤務先が「口頭でも良い」のであれば、それで済ませることができます。一方で介護休暇申出書の様式があれば、これを利用します。会社に介護休暇を取得した前例が無く、様式の定めが無い場合は、厚生労働省の示す申出書の一例*10を使っても良いでしょう。

介護休暇と介護休業の違い

介護休業は、育児・介護休業法に定められた労働者が取得できる休業です。介護休暇の取得可能日数は、年に5日間または10日間であるのに対し、介護休業の場合は通算93日間も取得することができます。そのうえ、3回を上限として分割して取得することが可能です。

介護休業給付金

一定の要件を満たす場合は、雇用保険法に基づき介護休業給付金が支給されます。支給される金額は、1回の介護休業につき、休業開始時賃金日額×支給日数×67%です。

具体的なケース紹介

チェス こちらでは介護休暇を取得できた人、できなかった人のケースを紹介します。

介護休暇が取得できたケースA

Aさん、50歳男性で大手化粧品会社の正社員で勤続5年以上です。妻の母親が初期の認知症を患い、家庭内で妻とともに介護をしながら仕事を続けています。

Aさんの妻が体調を崩し、母親の介護が充分にできない状態になりました。Aさんは事業主に対し、介護休暇申出書を使って休暇の取得を申出、3日間休暇を取得することができました。
休暇の後、問題なく職場に復帰することができました。Aさんは1年間であと2日間休暇を取得することができるので、万が一の時にはまたこれを利用しようと考えています。

介護休暇が取得できたケースB

Bさん、40代後半女性、地元のスーパーマーケットでパートタイマーとして3年間勤務しています。1週間の所定労働日数は5日程度、勤務時間は9時~17時です。

実父が介護な必要な状態にあり、病院への送迎を行うため、事業主に対し半日だけ介護休暇取得を申し出、取得することができました。仮にBさんの1日の労働時間が4時間以下の場合は、半日単位の介護休暇を取得することができません。

介護休暇を取得できなかったケースC

Cさん、50代前半の女性、自宅近くのラーメン屋さんでパートタイマーとして勤務を始め、約3ヶ月が経過しました。自宅で同居している実母の体調が悪くなり、一時的な介護が必要な状態になったため、介護休暇5日間を取得しようと事業主に相談・申し出をしました。

Cさんからの相談・申出を受けた事業主は、繁忙期であること、Cさんの雇用期間が6ヶ月未満であることを理由に、介護休暇取得を拒否しました。

このケースの場合、事業主がCさんの介護休暇申出を拒むことは適法です。仮に、Cさんの雇用期間が6ヶ月以上で、1週間の労働日数が2日以上の場合は、事業主は申出を拒むことができません。

介護休暇を取得できなかったケースD

Dさん、50代後半の男性、アルバイトとしてコールセンターで勤務を始め、約1年が経過しました。1週間の労働日数は1日です。自宅で同居している妻が軽い脳梗塞で倒れ、介護が必要な状態になりました。Dさんは介護休暇を取得しようと事業主に相談・申出をしました。

Dさんからの相談・申出を受けた事業主は、繁忙期であることと、Dさんの1週間の労働日数が2日以下であることを理由にこの申出を拒否しました。

Dさんは、事業主が拒否したことを妥当だとは分かっていますが、納得がいかず信頼関係が損なわれたと感じたため、退職することにしました。このケースの場合、事業主がDさんの介護休暇申出を拒むことは適法です。

最後に

家族がいつ何どき、どのような理由で要介護状態になるか分かりません。仕事と介護の両立ができることを目指す介護休暇を取得するために、あらかじめこの制度を理解しておきましょう。

また、日頃から家族の介護の問題について、できる範囲で良いので、上司等に相談しておき、自分の状況を知らせておくと休暇の取得がスムーズにいくかも知れません。家族の介護が長引くようであれば、介護休暇ではなく介護休業の取得を検討してみましょう。

これら介護休暇・介護休業を便利に活用して、介護と仕事の両立ができるようにしましょう。

参考:

*1 厚生労働省「平成30年 雇用動向調査」

*2 株式会社 大和総研 「介護離職の現状と課題」 2019年

*3 厚生労働省 介護休業制度及び介護休暇制度の取り扱いについて

*4 厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし

*5 厚生労働省 介護休暇等に関する参考資料

*6 厚生労働省 子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります

*7 厚生労働省 育児・介護休業法のポイント

*8 厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし

*9 厚生労働省 介護休暇に関する規定

*10 厚生労働省 〔子の看護休暇・介護休暇〕申出書

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※掲載情報につきましては、 2020年04月04日公開時点のものです。 施設情報・制度・資格などにつきましては、改定などにより最新のものでない可能性があります。必ず各機関や団体、各施設などにご確認ください。