新型コロナウイルスの闇と戦う介護職にエールを!

新型コロナウイルスの闇と戦う介護職にエールを!

非常事態宣言が発令され、自粛要請を受けて多くの方が外出を控えているにもかかわらず、一向に収まる気配が見えない新型コロナウイルスの拡大。

そんな新型コロナウイルスと最前線で闘っている福祉や医療の現場の方々についてのお話を、福祉・看取り分野における専門家の方にお伺いしました。

今回こちらの記事を執筆してくださったのは、葬儀・仏事分野のトータルコンサルティング事業を展開する「アルック」代表・吉川美津子さん。
福祉や葬儀業界に長く深く携わり、自身も介護職として実際に現場に立たれている吉川さんが触れた介護現場の現状とはどのようなものなのでしょうか。

 

介護現場の苦悩

病院内のイメージ

高齢者や持病のある人ほど重症化しやすいといわれる新型コロナウイルス。介護サービスを提供している介護事業者の間では危機意識が高まっています。

介護サービスの利用者の多くは、家族を頼ることができなかったり、頼ることができたとしても、介護度が高いために身体介護を受けることが難しいケースもあるでしょう。昼夜逆転や、徘徊で常時見守りが必要なケースも少なくありません。

そんな中で、頼りにしていた介護サービスを利用できないとなると、もはや生きる術を失ったといっても過言ではないのです。

しかし、介護・福祉関係の事業者を震撼させるニュースばかり入ってきます。愛知県では、3月11日までに2か所のデイサービス事業所で集団感染が確認されました。名古屋市では感染者が出た施設を含め、市内の約126施設に2週間の休業を要請。影響を受けた利用者は5800人にのぼったといわれています。

また、千葉県の障害者福祉施設では、利用者と施設職員合わせて3月29日までに86人感染が確認されています。施設利用者は入所と通所を合わせて79人、職員は67人。千葉県の発表によりますと、拡大防止に向けて感染者の隔離対応と、感染症に詳しい医師と看護師の派遣を行うとしています。

発熱者の隔離、職員の自宅待機等で疲弊する現場

防護服を着るイメージ

施設入所者の場合、施設内で感染の疑いが出たから、他の施設に移動してもらいましょう、というわけにはいきません。介護サービスは利用者によっては命綱。千葉県の障害福祉施設のケースでも、「感染の有無にかかわらず、慣れた環境での生活が望ましい」と、危険区域と安全地域に分けて障害福祉サービスの提供がされるそうです。

介護施設、介護サービスの事業所では、ウイルスや細菌など感染症との戦いは日常的に行われています。介護施設では感染委員会を設置し、構成メンバーで施設の指針・マニュアル等を作成し、手直しも行っています。

現在多くの介護施設では、家族の面会、ボランティアの受け入れを中止。職員のマスクの着用や手洗い・うがいはもちろんのこと、出勤時の体温測定も徹底して行っていることでしょう。

接触感染、飛沫感染、空気感染、血液媒体感染等、感染経路をいかに遮断するか、食器の洗浄方法、排泄物や嘔吐物の処理方法等、厚生労働省作成のマニュアルを元に、各施設で独自マニュアルを作成し対応しています。

「先日、職員に発熱症状があり、数日続いたときは、施設内に緊張が走りました。当人と濃厚接触に該当する職員は数日間就業停止。また、利用者の中には他のフロアに行って徘徊する人もいることから、感染を広げてしまう危険性を避け、この期間だけはエレベーターを止めてフロア間の行き来を制限していました。今回は大事にいたらずおさまったのですが、自分が媒介者となるおそれが高いことを改めて認識しました。」

と語るのは介護福祉士の中村恵美子さん(仮名:35歳)。

感染源を持ち込まないために、すべてをシャットアウトできればそれに越したことはありませんが、介護・看護・相談員等、直接利用者とかかわるスタッフだけでなく、清掃・休職等の委託業者など、多くの人が介護現場の周辺を支えています。

「インフルエンザやノロウイルスなど、高齢者にとって致命傷になりますので、十分対策をしてはいましたが、これまでは職員間でも、感染に対する意識に温度差があったのは否めません。しかし今回は正職員、パート、外国人スタッフ、さらに外部委託業者を含めて全員が一丸となってこの局面を乗り切ろうと団結しています。疲弊と一言で片づけたくない。」

という中村さんの言葉からは、現状に立ち向かっていこうという強い覚悟を感じます。

「命を支える」現場にいることの誇り

遠くを見つめる高齢者のイメージ

「私が危惧しているのは、新型コロナウイルスだけではなく、この影響で本来ならば受けらえるであろう適切な医療・介護を受けられなかったために、悪化したり亡くなってしまったりする人が出てきてしまうのではないか、ということです。」

と訪問介護に携わる梅津悦子さん(仮名;54歳)は言います。

「今まで、介護職は暮らしを支えるサポーターであると思っていましたが、今は、暮らしはもちろんですが命を支えるサポーターであると思うようになりました。」

梅津さんがかかわる利用者には、デイサービスを利用している人もいます。デイサービスは人の出入りも多く、感染リスクも高くなります。そのため今後は訪問介護を頼りにする人が増える可能性もあるでしょう。

「介護って、誰でもできると言われてしまいがちですが、適切な介護を受けられないと生命維持に支障をきたす人もいるんです。」

と続けます。

そんな中イギリスでは、3月24日、新型コロナウイルス対策として、公的医療サービスを支えるボンティアを募集。するとわずか1日足らずで政府の目標としていた25万人を大きく超える応募があったそうです。

今回募集したボランティアの業務内容は、高齢者や持病のある人など家から出られない人のために生活必需品の買い物に行ったり、薬を届ける等をお願いするとのこと。

それとは別に、すでに引退した医療関係者およそ12万人が呼びかけに応じて復職の意思を示しているとしています。

さらにイギリスでは3月26日、「医療・介護スタッフに拍手を(Clap for Carers)]

というキャンペーンが行われました。このキャンペーンは、インターネットでの呼びかけから始まったもので「この前例のないときにこそ、医療従事者などに感謝を伝えよう」と有志が企画したもの。イギリス全土では、窓や玄関を開けた人が一斉に拍手し、感謝を表現。病院で働くスタッフも、互いに拍手をする様子が紹介されました。

「私が介護の仕事に携わるようになって、今が一番重大な局面であると思います。現場だけではなく、日々緊張感を持った生活をしなければいけません。ただこの施設いる方の多くは、外がどのような状況になっているのか理解できていません。つまり、普段と同じ日常の空気が流れているわけです。私はこの日常を守るために、ここにいるんだ、と誇りを持って業務に携わっています。」

と前述の中村さんは言います。

もちろん、人々の暮らしを守るため、生活インフラを支える人は医療・介護関係者だけではありません。スーパー、物流倉庫、ドライバーはもとより生産者からエンジニアまで多くの人の支えが必要です。

「命を支える仕事だと思う」

そういった訪問介護士の言葉が決して大げさな表現ではないということを、誰もが実感しているに違いありません。

(Posted by 吉川美津子さん)

【吉川さん】

葬儀ビジネス研究所
https://www.1sogi.com/

※プライバシーに配慮しすべて仮名とし、個人や施設が特定されないように一部変更して紹介しています。

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※掲載情報につきましては、 2020年04月29日公開時点のものです。 施設情報・制度・資格などにつきましては、改定などにより最新のものでない可能性があります。必ず各機関や団体、各施設などにご確認ください。