介護の仕事でよく言われる「寄り添う」とは?

介護の仕事でよく言われる「寄り添う」とは?

介護士

「寄り添う」という言葉について、介護の仕事をしている方なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

「利用者に寄り添ったケアをしましょう」というセリフは聞きなれたものかと思います。それだけ利用者に寄り添うケアが大切なことだと認識され、必要とされている証拠でもあるのでしょう。

けれど、その言葉はなにかぼんやりとしていて、実際に何をすれば寄り添うことになるのか答えをだすことは難しいです。そこで「寄り添う」ということについてスポットを当ててみたいと思います。

【寄り添うとは】

 

寄り添うとは「ぴったりとそばに寄る」という意味を持つ言葉になります。

似た言葉には、「肩を寄せ合う」「持ちつ持たれつ」「真心を込める」「相談に乗る」などがあります。体を寄せ合うという意味を持つ言葉ですが、介護では精神的な意味でとらえることが多いのではないでしょうか。

その理由は利用者である高齢者によく見られる問題のためといえるでしょう。

そもそも高齢者とは、WHOの定義では65歳以上の方を指しています。

介護保険サービスを利用しているのは、65歳以上の高齢者のなかでも、後期高齢者と呼ばれる75歳以上の方が中心です。特徴として心身機能の低下、認知症の増加、医療機関受診割合が高い、要介護認定者の割合が高いなどがあります。

これらの特徴から精神的な面について考えてみると、一つの大きな共通点があることに気づけるかと思います。
高齢者は常に「不安」を抱えているということです。

体が動かない、認知症になり物忘れが多くなり理解できないことが増える、病気をしている、介護認定を受け高齢者という現実をつきつけられたなど、不安になる要素に囲まれているのです。

この不安な気持ちを理解し、時にはその気持ちを和らげ安心できるコミュニケーションをとることが「寄り添う」ということではないのでしょうか。

【コミュニケーション】

介護士

コミュニケーションと聞くと、お喋りであったり声のかけ方であったり言葉のやりとりを思い浮かべる方も多いかと思います。

しかし、相手に与える印象は言葉以外の部分が大きく影響します。

アメリカの心理学者のアルバート・メラビアンがまとめた「メラビアンの法則」というものを聞いたことはあるでしょうか。
これは、話し手が聞き手に与える印象について調べたものです。

そのなかで言葉そのものが与える影響はわずか7%であり、その他の言葉ではない要素が93%を占めているといったものです。

  • 視覚情報…見た目、身だしなみ、表情(視線)など…55%
  • 聴覚情報…声の質・大きさ・速さ(テンポ)…38%
  • 言語情報…話す言葉そのものの意味…7%

以前、介護の現場で同僚からこんな相談をうけたことがあります。

「利用者に対して丁寧に声をかけているのだが介助に応じていただけない。何が悪いのでしょうか」という内容でした。

確かに、その方はいつも丁寧な言葉を選び利用者に声をかけています。けれども、表情は笑顔ではなく、声の質も何か冷たそうなものでした。

メラビアンの法則から考えるとそういった言葉以外の部分で失敗していたといえるのでしょう。笑顔の人の周りには笑顔が集まりやすいものです。それだけ、言葉以外の部分が大切であるということなのです。

こんなこともありました。

施設に入所している認知症の利用者が、毎日夕方に近づくにつれ「早く家に帰らないといけない」と落ち着かなくなるのです。
わたしはいつも「じきに迎えがくると思いますよ」と丁寧に声をかけていました。

けれど、その利用者は落ち着くどころか、気持ちをよりエスカレートさせ怒ってしまうのです。

わたしは何とか落ち着いていただけないか考えてみました。
帰りたいという利用者の隣に座ったり、しゃがんで目線を合わせたりすることをしてみたのです。

するとこれまで怒ってばかりだった利用者が不安な気持ちを話すようになったのです。

言葉ではない部分で伝わることがあったのでしょう。この人は話や気持ちを聞いてくれると感じていただけたのかもしれません。後はそれほど難しいことではありませんでした。頷きながら話を聞くだけです。

それで怒ることもなく穏やかに過ごすことができたのです。この経験を通して、わたしは言葉だけではないコミュニケーションの力を知りました。

コミュニケーションはスキルといっていいものではないかと思います。生まれつきのものではなく、後から身につけることができるものです。特に介護の現場では不安な高齢者が多いので、必要性は高いといえるでしょう。

利用者に寄り添うための方法はたくさんあるかと思います。利用者のペースに合わせることや、24時間の過ごし方を知り理解を深めるといった取り組みもその方法の一つです。

どれも大切なことで、効果的な方法でしょう。けれども、高齢者の置かれている立場や状況、不安な気持ちを理解していないと、どの取り組みも必ずしも効果的とはいえないのではないでしょうか。

それらの取り組みや、毎日のケアにおいてベースとなってくるのがコミュニケーションのスキルです。それを身につけて利用者と向き合い、コミュニケーションを積み重ねていくことで利用者との間に信頼関係が生まれてきます。

それほど難しいことではなく、いつも行っているケアに利用者の気持ちを知るという、ひと手間を加えてみてはいかがでしょうか。そうすることで「寄り添う」ことが今よりも少し上手にできるでしょう。

(Posted by 子守熊)

介護職員に必要なコミュニケーション技術

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※掲載情報につきましては、 2019年12月13日公開時点のものです。 施設情報・制度・資格などにつきましては、改定などにより最新のものでない可能性があります。必ず各機関や団体、各施設などにご確認ください。