高齢者介護における作業療法

高齢者介護における作業療法

折り紙

みなさんは、作業療法という言葉をご存知でしょうか?

折り紙や手芸、木工細工など作業活動を媒介にして利用者や患者の良い面や、コミュニケーションなどを引き出す治療法で、今や全国の介護施設や病院などでも利用されています。

作業療法が高齢者にどんな影響をもたらすのかを解説します。

作業療法とは

作業療法は英語でOccupational  Therapyと訳し、作業活動を媒介に、患者や利用者の治療を目的に行われる療法です。欧米から始まりその後に日本に紹介されました。

もともとは精神に障害をもたれた方や素行が良くなかった方に対して、作業を媒介にその人たちが成長していく過程を通して、作業活動そのものの意味合いを見つめ直し、治療として確立しました。

作業療法の専門家「作業療法士」

編み物

1957年、作業療法の専門家である作業療法士が日本に誕生し、その後1966年に国家資格として認定されました。作業療法士は、精神科領域を中心に職域を広げ、今では一般病院や高齢者施設などでも働いています。

作業療法士は、手芸や工芸など作業活動を用いて利用者の潜在能力を引き出す一方で、更衣・排泄・入浴など利用者のADL能力を高めるリハビリテーション専門職としての役割も持っています

狭義の作業療法では、手芸、工芸、レクリエーションなど特定の作業活動を指すことが多いですが、広義の作業療法では、人間の活動することすべてを作業活動として捉え、それらの活動を治療手段として用いています。

作業療法の効果

手の写真

では、作業療法とは具体的にどんな効果があるのでしょうか?

人は作業活動を行うときに、その工程や流れを頭の中で組み立てます。そのための最善策を自分自身で考えながら実行しています。この計画立てて物事を実行することが大切で、結果の予測や工程の理解などの複雑な思考回路が身に付きます。

自分一人で難しいと感じたときや行き詰ったとき、誰かの助けを借りようとします。その際に自分一人の作業から他者へのコミュニケーションが生まれます。

他者とコミュニケーションをとることで、新しい友人や仲間ができたり、困った時には頼れるという安心感も生まれます。また、コミュニケーションが失敗した場合でもその失敗から学ぶこともたくさんあります。

作品が完成した時、達成感と同時に自分自身を見つめる良い機会となり得ます。「もう少し工夫してみよう」とか「もう少し難しい作品にも挑戦してみよう」など肯定的な感情も生まれるかもしれません。

逆に失敗してしまった場合、失敗ということで終わらず、「なぜ失敗したのか」「どうしたら成功させることができるのか」など次回成功のための学習の機会ともなります。

高齢者介護領域における作業療法

お茶を持つ女性の写真

作業療法を通して得られるもの

高齢期を迎えると、若者の時代と比べ体力や判断力、思考力などが低下します。長年連れ添ってきた配偶者と別れて気持ちがふさぎ込んでいる人もいるでしょう。

高齢者にとって作業活動は、体力や学習能力の向上という目的以外にも、寂しさを紛らわす方法の一つとしても効果があります。

気持ちがふさぎ込んで人としゃべるのが億劫となった人でも、以前なじみのある活動を行うと、生き生きと自分自身を作品に表現する人もいます。人と話すのは苦手でも、自分の得意だったことを教えるのが好きな人もいます。

なじみのある活動でもやり方を忘れてしまったり、以前のように器用にできなくて自信をなくしている人もいます。その人に指導役に回ってもらったり、苦手な部分を人に手伝ってもらったり、得意な部分だけを行ってもらったりすると、自信を少しずつ回復する場合もあります。

認知症の方への作業療法

作業療法は、健康な高齢者ばかりでなく、認知症を患った人に対しても行われます。記憶障害を持った人でもなじみのある作業活動は、昔のことを思い出すきっかけになるかもしれません。

認知症を患うと、記憶障害や見当識障害などの影響で、自分に自信が持てず人と接することを避けてしまう人も多くいます。作業活動を通して、作品完成の達成感や作品完成に至るまでの過程を通して、失っていた自信を取り戻すきっかけになるかもしれません。

また、作品完成のために、他の利用者やスタッフと協力することでコミュニケーションの機会が得られたり、集団への所属感が得られるかもしれません。自分一人でなく周りに気にかけてくれる人がいることを認識し、安心感につながる可能性もあります。

作業療法を行う際の注意点

作業療法を行う前に、事前に確認しておくべき点がいくつもあります。作業療法が失敗につながりやすい、いくつかの注意点を紹介します。

なじみのある活動ならできるは間違い

過去になじみのある活動であれば出来るだろうと簡単に考えてしまうのは大きな誤りです。

なじみのある活動を行わなくなった理由は人それぞれ違います。視力や聴力など感覚器の老化によってし難くなった人もいれば、認知症などの影響で一つ一つの工程がわからなくなった人もいます。また、今まで簡単に出来ていたものがうまく出来なくなり自尊心が著しく傷ついている人もいます。

そんな人たちに安易に作業活動を実施するとより自信を失ってしまう場合があります。

意外に難しい難易度設定

作業活動を提供する際に、難易度設定にも気を配る必要があります。

難しすぎたり、簡単すぎたりすると利用者の自尊心を傷つけてしまうことがあります。どのくらいの難易度が良いかは、利用者と接しているうちに徐々につかめてきます。

難易度設定に自信がない場合には、個人活動ではなく、スタッフや他の利用者と一緒に行う活動から参加を促すと効果的です。

疲労に注意

身体的な疲労は見て読み取れますが、精神的な疲労はわかりにくい場合が多いです。

作業活動は、特にその活動に慣れていない人にとって、かなりの労力を要します。頭の中で考え、試行錯誤し、他者にも気を配りと想像以上にエネルギーが消費されています。

定期的に休憩を入れたり、根をつめている人には時々話しかけたりして、疲労の度合いを観察しましょう。

作業療法をうまく利用しよう!

手と手の写真

高齢者介護において作業療法は、心の拠り所にもなり得る大切な活動の場を提供します。その中で、頭を使ったり体を動かしたり、人とコミュニケーションを取ったりと利用者にとって様々な体験・学習を促すことができます。

しかし一方で、作業療法の利用の仕方を誤れば、利用者に不利益も与えてしまいます。作業療法を提供するにあたって、その目的を明確にし、利用者の反応にもしっかりと目を向けるようにしましょう。

(Posted by めっし~)

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※掲載情報につきましては、 2020年01月21日公開時点のものです。 施設情報・制度・資格などにつきましては、改定などにより最新のものでない可能性があります。必ず各機関や団体、各施設などにご確認ください。