どうすれば事故は防げる?介護現場の事故防止に必要な職場の取り組み

どうすれば事故は防げる?介護現場の事故防止に必要な職場の取り組み


病院や介護施設など、介護現場には事故がつきものです。できるだけ職場の事故が減るように、頭を悩ましている介護職も多いでしょう。

私は、リハビリの専門職として介護施設のリスク管理委員会に所属しながら、現場の事故防止に取り組んできました。事故を防止していくには、職場全体を巻き込んだ取り組みが必要です。

そこで今回は、介護施設の事故防止に必要な職場の取り組みについて紹介します。

介護施設で働く75%以上の職員が事故を経験


2018年10月1日~2019年1月31日の期間に、全国労働組合連合会が5,817名の介護職を対象におこなった「介護労働実態調査」によると、介護施設で働く約75%の職員が、業務中に何らかの事故を経験していることがわかりました。

介護職員が経験した事故内容の内訳は、次のようです。

事故内容 割合
目の届かない所での転倒・転落/誤嚥 63.7%
誤嚥など薬に関わる事故 18.9%
利用者同士のトラブル 24.3%
介助中の事故 23.1%
無断外出 6.3%
その他 3.5%
事故は起こしていない 23.2%

最近では、多くの介護施設で、介護職員のマンパワー不足が問題となっています。そのため、人目の届きにくいフロアやトイレなどで、利用者さんが巻き込まれる事故が増えているのでしょう。

また、同調査によると、事故が起きた原因では「現場の忙しさ・人員不足(78.7%)」「知識や技術の未熟さ(37.3%)」「職種内・職種間の連絡・連携の不備(31.5%)」との回答が多く見られました。

このような調査結果を踏まえると、介護現場では、マンパワー不足のほかにも、職員の教育や連携不足についても考えていかなければ事故を防止できないでしょう。

まとめると、介護施設の事故を防止するには、

  1. マンパワー不足への対応
  2. 経験の少ない職員への教育
  3. 職員同士が連携しやすい環境づくり
の3つが課題です。

介護施設の事故を防止するには?


では、事故を防止するためには、どのようにすれば良いのでしょうか?ここからは、具体的な対策を紹介しましょう。

職員のマンパワー不足に対応する

介護職のマンパワー不足を解消するためには、新規採用の職員を増やしたいところですが、介護施設の場合、求人募集をしてもすぐに応募者が増えることは考えにくいでしょう。

いまはどこの施設でも介護職を募集しているので、マンパワー不足を解消できるほどの新規採用は期待できません。

そこで、マンパワー不足に対応するには、少ない人員でも、事故を防止しやすくなる働き方の工夫や業務改善が必要になります。

例えば、介護記録は利用者さんが静養するフロアで書くようにしたり、長くなりがちな会議に制限時間を決めたりすると、フロアで介護職員が利用者さんの見守りをする時間が増やせるでしょう。また、フロアでは、介護職員は一人ひとりの利用者さんと個別に関わることのほうが多いかもしれません。

ですが、事故防止の視点で考えると、お茶会やレクリエーションなど、小さな集団活動を通した関わりもおすすめです。

集団活動は一見すると非効率な関わり方にも思えますが、実は、集団の中にいる安心感から利用者さんは不穏な言動が減ったり、職員は利用者さんを見守りやすくなったりします。

このように、いつもの働き方や業務内容が、職場のサービスにとって非効率で事故のリスクを高めていることもよくあります。事故防止を考える時には、まずは、職員の働き方や業務内容を振り返ってみましょう。

経験の少ない職員を教育する

介護職としての経験が少ないと、自己流の介助方法をおこなうことで事故が起こるリスクが高まります。介護施設の職員のなかには、他の業界から転職してきている人も多いので、不慣れな業務で事故を起こさないように教育が重要です。

介護の知識や技術をしっかりと教育するには、次の3つの段階を踏むと良いでしょう。

  1. 先輩職員の介助場面を見学する
  2. 先輩職員に確認してもらいながら、同じ介助方法をマネしてみる
  3. 自分ひとりで先輩職員と同じ介助方法をおこなう
先輩の介護職員からすると、「教えたからできるはず!」と思えるかもしれませんが、一度の教育で、先輩と同じように介助方法ができる職員はいません。

先輩の介助方法を何度も見学し、マネしてみて、自分でやってみる実体験のくり返しが、介護の知識や技術の定着には必要です。

もちろん、経験の少ない職員をしっかりと教育できるまでは時間もかかりますが、将来的には、大きな介護力として心強い職員のひとりになってくれるはず。

事故を防止していくためにも、教育にかける時間を増やしてみてはいかがでしょうか?

新人指導に悩んでいる人は以下の記事がおすすめです。合わせてご覧ください。

介護職の新人指導はどうしたらいい?自信がない人が知っておくべき指導方法

職員同士が連携しやすい環境づくり

それから、職員同士の連携ができている介護施設も、事故を防止しやすくなります。声かけや申し送りなどのコミュニケーション機会は、普段の業務のなかで増やしたいものです。

例えば、事故を防止するには、次のようなコミュニケーションが効果的です。

  • フロアを離れる時には、他の職員に声をかける
  • 利用者さんのちょっとした言動や体調の変化も、申し送る
  • 気になったことは、メモや付箋に残して全職員に周知する
など

このような方法を通じて情報が伝達し合えると、事故の予兆にも気づきやすくなるでしょう。

ただし、連携が大切だからといって、職員に「声かけや申し送りをするように」促しても、なかなか浸透しません。連携し合える職場の雰囲気がないと、自分から声かけをしあったり、ちょっとしたことを申し送りしたりしにくいものです。

そのため、連携し合える職場の雰囲気をつくるには、まずは役職者やリーダー、リスク管理員が中心となって、声かけや申し送りをし合っている様子を示せると良いでしょう。

事故防止の管理者が声かけや申し送りをしている様子が伝わると、徐々に介護職員同士がマネをしていき、連携しやすい環境づくりができていきます。

「事故の芽」を摘んでいくことも大切


労働災害には、「ハインリッヒの法則」があると言われます。

「ハインリッヒの法則」とは、重大な事故が1件起こる背景には29件の軽微な事故があり、軽微な事故の背景には300件の小さなミスがあるという法則です。

介護現場に置き換えてみると、事故が起こる背景には、転倒・転落・誤嚥の未遂、車いすのブレーキのかけ忘れ、食事の配膳間違いなど、必ず小さなミスが隠れています。

事故を防止する時には、そういった「事故の芽」に気づき、小さなミスのうちから情報を共有しあえることが大切です。小さなミスを報告・連絡・相談しあい、大きな事故につながる前に対策を考えるようにしていきたいものです。

 

参考:
全国労働組合連合会「介護労働実態調査」http://www.zenroren.gr.jp/jp/kurashi/data/2019/190424_02.pdf

 

(Posted by 田口 昇平)

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※掲載情報につきましては、 2020年01月28日公開時点のものです。 施設情報・制度・資格などにつきましては、改定などにより最新のものでない可能性があります。必ず各機関や団体、各施設などにご確認ください。

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